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高知地方裁判所 平成12年(ワ)65号 判決 2000年12月15日

原告

田中義一

ほか三名

被告

安並和人

主文

一  被告は、原告田中義一に対し、金一一六六万二七三〇円及び内金一一〇六万二七三〇円に対する平成一二年三月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二  被告は、原告森徹也、原告田中祥介及び原告田中美帆の各自に対し、金三八八万七五七六円及び内金三六八万七五七六円に対する平成一二年三月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余は原告らの負担とする。

五  この判決は、第一及び第二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

一  被告は、原告田中義一に対し、金二七五二万三六六二円及び内金二六九二万三六六二円に対する平成一二年三月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二  被告は、原告森徹也、原告田中祥介及び原告田中美帆の各自に対し、金九一七万四五五四円及び内金八九七万四五五四円に対する平成一二年三月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

第二事案の概要

一  争いのない事実及び前提となる事実

1  亡田中立子(昭和二五年一一月二五日生、以下「立子」という。)は、平成九年一一月二四日午後一一時六分ころ原動機付自転車(高知市ひ六三七六号、以下「立子車」という。)を運転して国道五六号線を城山町方面から土佐市方面に向かって西進走行し、高知市鴨部九二一番地先の信号機による交通整理がなされている三叉路交差点(以下「本件交差点」という。)に至り、本件交差点において右折を開始して朝倉東町方面に向かおうとしたところ、対向車線を土佐市方面から城山町方面に向かって時速七〇キロメートルで東進走行していた被告が運転して運行の用に供する普通乗用自動車(高知五七め七三〇二号、以下「被告車」という。)と衝突する交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

2  立子は、平成九年一一月二五日午前〇時三四分搬送先の病院において、本件事故のために死亡した(享年四七歳)。

3  立子の相続人は、夫の原告田中義一、立子と前夫森友義との間の長男である原告森徹也、立子と原告田中義一との間の長男の原告田中祥介及び長女の原告田中美帆である(弁論の全趣旨、本件記録中の各戸籍謄本)。

二  原告らの請求の概要

原告らは、本件事故による損害(治療費、葬儀費用、逸失利益、慰謝料及び弁護士費用)の法定相続分に相当する金員及び当該金員から弁護士費用相当額を控除した金員に対する訴状送達の日の翌日以降の民事法定利率の割合による遅延損害金の支払いを被告に対して求めている。

三  争点

1  事故態様と過失

(一) 原告らの主張

立子は、本件交差点の対面信号機の右折青矢印信号の表示に従って立子車の右折を開始したところ、被告が居眠り運転もしくはそれに近い状態であったことから対向車線の対面信号機の黄及び赤の表示を無視して本件交差点内に進入してきたため、立子車と被告車とが衝突して本件事故が発生したものであるから、本件事故は、被告の一〇〇パーセントの過失によって惹起されたものであり、立子にはなんらの過失もない。

(二) 被告の主張

被告は、対面信号が青であることを確認の上で走行していたところ、本件交差点の前方で立子車を発見して制動措置を講じ、左転把をしたが、立子が安全確認を怠って立子車を発進させて右折をしたために本件事故が惹起されたものである。したがって、本件事故は立子の一方的な過失によって惹起されたものであり、被告は無過失である。また、仮に被告に過失が存したとしても、被告の過失割合は二割であり、立子には八割の過失がある。

2  損害

第三裁判所の判断(甲第一号証の一及び二、第二号証の一及び二、乙第一ないし第三号証、証人松村敏彦、証人田村博文、原告田中義一本人尋問、被告本人尋問、調査嘱託)

一  本件事故態様

1(一)  国道五六号線は、中央分離帯の設置された片側二車線道路であり、本件交差点の西進車線側には、右折レーンが設けられていた。

(二)  本件交差点の信号機は、午後八時から午前七時までの間は、半感応運用がなされており、右の時間帯においては、国道五六号線を横断するための歩行者用の押しボタンが押された場合及び朝倉東町方面から本件交差点に進入する車両を機械が感知した場合を除き、国道五六号線の対面信号がいずれも青を表示していた。なお、右の押しボタンが押された場合あるいは朝倉東町方面から本件交差点に進入する車両を機械が感知した場合は、国道五六号線の対面信号が黄、赤を表示するが、西進車線の対面信号は、赤信号が出た際に六秒間直進及び右折の青矢印信号が点灯するように運用されていた。

(三)  本件交差点付近の速度規制は、時速五〇キロメートルであった。

(四)  本件事故当時、降雨はなく、道路は乾燥していた。

(五)  本件交差点付近には街路灯が設置されているほか、本件交差点付近にはファミリーレストランが存し、本件事故当時、本件交差点付近は明るかった。

2  被告は、本件事故前、本件交差点の数百メートル手前の国道五六号線に面した書店に立ち寄った上で、被告車を運転して同所から国道五六号線に進入して、東進したが、その際対面信号が青であることを確認し、中央分離帯寄りの車線を時速約七〇キロメートルで走行した。そして、本件交差点の対面信号が青の状態で二一・八メートル手前で人影を視認し、ハンドルをやや左に切り、ブレーキに足を置いたが、本件交差点内において間もなく立子車と衝突し、立子は、本件交差点東側の中央分離帯上に跳ね飛ばされ、意識不明となった。

3  被告は、実況検分終了後、立子が搬送された病院に赴き、同所において応対した立子の義兄の松村敏彦に対して、衝突するまで立子にほとんど気が付かなかった旨を述べている(なお、右2の事故態様においては被告が立子を視認してから衝突までの時間は一秒程度であり、被告の右の発言は、右2の事故態様と符合するものである。)。

4  被告は、本件事故について、不起訴処分になっている。

5  原告田中義一の本人尋問における供述中には、立子が本件事故当時右折の青矢印信号が出た際に右折を開始したところ、対面赤信号を無視して直進してきた被告車と衝突したとの部分があるが、推定によるもので、具体的な裏付けが無く、右1(二)の信号の作動状況をも勘案すると、にわかには採用できない。

また、被告が走行開始後まもなく本件事故を惹起していることからすると、被告が居眠りないしそれに近い状態であったものとすべき根拠にも乏しい。

二  損害(弁護士費用を除く)

1  治療費(甲第一号証の一及び二) 金五二五〇円

2  葬儀費用(甲第二号証の一及び二) 金一二七万二〇七五円

3  逸失利益 金三二〇三万六三二八円

立子は、主婦として家事に従事する傍ら、高知市の臨時職員として稼動しているので、その逸失利益は、平成九年度の賃金センサス女子労働者学歴計の四五歳から四九歳までの年収額三六七万二四〇〇円を基礎とし、生活費割合を三〇パーセントとして控除し、六七歳までの二〇年間のライプニッツ係数一二・四六二二を乗ずると、金三二〇三万六三二八円となる。

4  慰謝料 金二二〇〇万〇〇〇〇円

立子が一家の主婦であったことからすれば、死亡慰謝料は、金二二〇〇万円が相当である。

5  合計 金五五三一万三六五三円

三  過失相殺

本件事故についての前記態様に照らすと、立子が右折時の注意を怠った過失が基本的には重いものの、被告にも、速度超過及び前方不注視の過失があり、これらを勘案すると、過失割合は、立子が六割、被告が四割というべきであるので、過失相殺後の損害は、金二二一二万五四六一円となる。

四  弁護士費用の加算 金一二〇万〇〇〇〇円

本件の難易及び右三の金額からすれば、弁護士費用としては、金一二〇万円が相当であり、損害賠償の総額は、二三三二万五四六一円となる。

五  認容額

1  原告田中義一 (相続分二分の一) 金一一六六万二七三〇円

2  その余の各原告(相続分各六分の一) 金三八八万七五七六円

六  以上の事実によれば、原告らの請求は、いずれも主文の限度で理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第六一条、第六四条及び第六五条を、仮執行の宣言について同法第二五九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 櫻井達朗)

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